ウィルス性肝炎には主にA型、B型、C型、D型、E型の5種類があります。ここでは主によく知られているB型、C型肝炎についてご説明します。
※ウィルス性肝炎の治療は医療費助成制度の適応がありますのでご相談ください。
B型肝炎
説明:
B型肝炎ウィルスが血液・体液を介して感染し発症する病気です。感染の原因のほとんどはHBV慢性感染者との性的接触によるものと考えられています。この他に、母子感染やHBV持続感染者の十分に消毒されていない器具を使った医療行為、入れ墨、ピアスの穴開け、カミソリや歯ブラシの共有なども原因とされています。
HBV感染後、一過性の急性肝炎を発症することがしばしばありますが、その大部分の人は体内からHBVが排除され慢性化しません。また、HBVに感染しながらも急性肝炎の症状が出ず、気づかないうちにHBVが排除される人も少なくありません。ただし、近年ではジェノタイプA型と呼ばれる欧米型やアジア・アフリカ型といった外来種のHBV感染が増加しており、これに感染すると比較的高い確率で慢性化を起こすことが知られています。
一方、乳幼児期に母親から感染した場合(母子感染)は、ウィルスを持続的に保有してキャリアーとなります。思春期を過ぎると自己の免疫力が発達し体内に存在するHBVを病原菌と認識できるようになり免疫反応が起こり急性肝炎を発症します。一般的には10~30歳代に一過性の強い肝炎を起こしHBe抗体陽性の比較的おとなしいウィルスに変化します。この場合はそのまま強い肝炎は発症しませんが、変異株のHBV感染の場合は慢性肝炎に移行する人もいます。このように思春期以降一過性の肝炎を起こした後はそのまま肝機能が安定したままの人がおよそ80~90%、残りの10~20%の人は慢性肝炎・肝硬変へと移行し肝臓がんを合併する人も出てきます。
予防・治療法:
治療の目標は、①HBe抗原の陰性化、②ALT(肝機能)の正常化、③HBV-DNA量の抑制であり、肝機能・年齢・肝臓の線維化の状態に応じて、インターフェロン(IFN)製剤、核酸アナログ製剤を選択します。核酸アナログ製剤は一度内服すると中断は難しいとされていますが、シークエンシャル療法(一時的にインターフェロンと核酸アナログを併用する治療)にて条件次第では中止することも可能です。
C型肝炎
説明:
C型肝炎ウィルス(HCV)が、輸血や血液製剤の使用、入れ墨、麻薬覚せい剤などの注射器、不衛生な状態での針治療、ピアスの穴開けなどによって感染する病気です。日本ではHCVに感染しているキャリアーは200万人以上いると言われています。急性肝炎のうち60~80%の人が慢性肝炎に進み、更に肝硬変に進行し肝がんを発症します。
予防・治療法:
以前はインターフェロンを軸とした治療でしたが、2014年9月より直接作用型抗ウィルス剤(Direct Acting Antivirals ; DAA)が登場し、内服薬のみでより副作用が少なくウィルス消失の治療成績が格段に進歩しています。
※自己免疫による肝疾患は難病指定されております。場合によっては医療費助成を受けられる可能性がありますのでご相談ください。
自己免疫性肝炎(Autoimmune hepatitis ; AIH)
説明:
原因は不明ですが、自己免疫の異常によって起こる肝炎であり、中年以降の女性に多く慢性に経過し、肝硬変や肝臓がんの発症の原因となります。
予防・治療法:
ステロイド、アザチオプリンをはじめとする免疫抑制剤で改善することが多いですが、治療を中断すると再燃することが多く、生涯にわたり治療が必要とされています。しかし、条件次第では(ALT値が正常上限の半分以下、IgG値が1200㎎/dL以下等)中止の可能性もあると現在は報告されています。
原発性胆汁性胆管炎(Primary Biliary cholangitis;PBC)
説明:
中年以降の女性に後発する特殊な肝硬変症の1つです。原因がはっきりとはしていませんが、自己免疫反応が関与しているとされています。肝臓内の小さな胆管が炎症により破壊され、胆汁が正常に流れず溜まってしまうことにより肝細胞が破壊され肝硬変へと進行します。皮膚のかゆみ・黄疸・腹水貯留・食道胃静脈瘤などが見られます。生涯診断されずに一生を過ぎる例もあるとされていますが、一般的には長い経過の末に肝不全に至ると言われています。
検診にて肝機能障害を認め、アルコール性・ウィルス性など否定された場合はこの疾患を疑い自己抗体などの検査が必要です。
予防・治療法:
この病気を完全に治す薬はまだありません。胆汁の流れをよくする利胆剤や、保険適応外ですが高脂血症のお薬を使用することもあります。